筋トレをすると、動脈硬化になりやすくなる??

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以前の記事にも書きましたが、2015年5月31日に、日本トレーニング指導者協会の総会・研修会&講演会に参加してきました。その中の講演でありました前田清司先生(筑波大学体育系スポーツ医学教授)の「定期的な運動と動脈硬化」がものすごく勉強になりましたので、引き続き今回もシェアしたいと思います。

2014年度の総会・研修会・講演会の画像

(写真素材:日本トレーニング指導者協会-JATI

今回の内容は、きっとあなたに「驚き」を与えるはずです。実際、私はこの講演の内容を聴いて、「えっ?そうなの・・・!?」とびっくりしたぐらいです。また、情報というのはあり過ぎても無さ過ぎてもダメだなぁということも実感できるのではないでしょうか。今回の記事についても、講演の内容を一部抜粋してお届けします。「なるほどぉ」というぐらいの感覚で読み進めてみてください。

それでは・・Vol.2のはじまりです!!

Vol.1のあらすじを復習

動脈を柔らかくする運動として、以前の記事の内容をまとめると、こうなりました。

・定期的な有酸素運動を行うことによって、動脈は柔らかくなる

・ただし、効果のある運動の量は、ある一定の範囲で頭打ちになる(上限がある)

・3~5METsの中強度での運動で効果があり、高齢者においては3METs未満の運動でも効果がある

一定の条件があるにせよ、有酸素運動には動脈を柔らかくさせる効果があることがわかりました。ということで、次に気になるのは筋力トレーニング(以下:筋トレ)の効果についてではないでしょうか・・・?(←え?私だけ!?笑)

筋力トレーニング(きんりょくトレーニング)とは、骨格筋の出力・持久力の維持向上や筋肥大を目的とした運動の総称。

 (Wikipediaより)

簡単にいえば、ウォーキングやランニングをしたり、プールで泳いだりするのは”有酸素運動”で、腕立て伏せや腹筋、スクワットなどで筋肉を鍛えていく運動のことを筋トレといいます。

もちろん、筋トレは筋骨隆々な体をつくるため、理想的な見た目や引き締まったBodyにするために行うかもしれませんが、それよりも何よりも年齢を重ねていくことで、骨密度が低下して骨粗鬆症になったり、転倒し骨折をすることで寝たきりになることが多い中、筋トレはそれらを予防する大きな役割があります。

そんな大切な役割をもつ”筋トレ”は動脈硬化とどんな関係があるのでしょうか・・・!?

筋トレをすると、動脈は柔らかくなるのか?

まずは、3つのデータをご紹介します。

・高強度の筋力トレーニングを行っているアスリートは、あまり活動的ではない人達と比べて、動脈が硬くなりやすい

(Otsuki,Maeda,et al.,Am J Physiol Heart Cric Physiol 2007 改変)

・高強度の筋力トレーニングを行っている中年の筋トレ実施者は、全く筋トレをやっていない人達と比べて、動脈が硬くなりやすい

(Miyachi et al.,Hypertension,2003を改変)

・若年者が4ヵ月間、高強度の筋力トレーニングをすることで、動脈が硬くなる傾向が見られた

(Miyachi et al.,Circulation 2004 改変)

※ただし、”脱トレーニング”といって4ヵ月後に高強度の筋力トレーニングを止めてしまうと、再び動脈の硬さが以前の状態に戻りました。

「なになに、どういうこと・・・!?」と思えるような結果かもしれませんが、このデータによって言えることは、高強度の筋力トレーニングは、動脈を硬くさせてしまうのです。

では・・・強度を変えれば効果に変化がでるの?

確かにあります。一つのデータをお見せします!!

中年の女性が中強度の筋力トレーニングを3ヵ月間行いました。その結果、トレーニングをする前後で動脈の硬さに変化はありませんでした。(つまり、筋トレをしても動脈が硬くならなかったということです)

※データとしては、わずかに動脈が柔らかくなる結果ですが、効果があると言えるほどの差ではありません。

(Yoshizawa,Maeda,et al.,Br J Sports Med 2009 改変)

ここまででわかったことは、『高強度の筋力トレーニングをすると動脈は硬くなり、一方、中強度の筋力トレーニングであれば変化がない』ということです。

で・・・きっとあなたも疑問に思いませんか。「高強度と中強度ってどれぐらい違うの!?」のはずです。実際、私も講演を聞いていて疑問に思っていましたが、恥ずかしながら質問することができませんでした(笑)。ですから、色々と調べてみました。

筋力トレーニングの強度について

ここでは、まずアメリカスポーツ医学会の基準をお話しておきます。

レジスタンストレーニングの強度の設定は容易ではない。強度設定に用いられている1RM(repetition maximum:最大反復回数)の何%という表現は真の強度ではなく1つのガイドラインとして用いられている。1RMの何%という根拠からの反復回数は筋群によって異なるように(たとえば、ベンチプレスと脚カール)人によって異なる。1RMの反復回数がさまざまであるということは強度の正確な測定にはならないことを意味している。

 (引用元:「運動処方の指針」運動負荷試験と運動プログラム、原書第7版、American College of Sports Medicine、監訳 日本体力医学会体力科学編集委員会) 

つまり、トレーニングの場合、色んな要素が複雑に関係しているので、「これぐらいが高強度で、あれぐらいが中強度です」とは簡単に定義できないということです。

確かに・・”強度”を正確に断定することができなかったとしても、ある程度は基準がないと困りますよね。ということで、一般的なものでいうと「強度」は、こう定義されます。

ウェイトトレーニングの強度の値を「RM」と表記します。
「RM」とは「最大反復回数」のことです。1RMなら1回しか反復できない重さで100%の力を出すことになります。10RMなら10回反復できる(11回目は反復できない)重さです。

初心者の場合はまず自分の10RMの強度を知ることが重要

目的別トレーニング表
目的 強度 RM セット数 インターバル
筋力向上 高強度 3~5RM 少なく 3~5分
筋肥大 中強度 8~12RM 多く 1~2分
筋持久力 低強度 15~20RM 多く 1分以内

(引用元:ザ・バルクアップトレーニング

ここでは、RM(最大反復回数)を使って、3~5回しかあげられない重さでトレーニングをすることを高強度の筋力トレーニング、一方、中強度の筋力トレーニングになると8回~12回で、13回目はできない負荷のことを指しています。

例えば、あなたが普通の腕立て伏せをやったら4回しかできなかった。でも、膝をついて腕立て伏せをやったら10回できたとしましょう。それはあなたにとって、普通の腕立て伏せは「高強度の筋力トレーニング」で、膝付きの腕立て伏せは「中強度の筋力トレーニング」ということを意味しているのです。要するに、自分のできる運動の負荷を基準として考えています。

ですが・・・

こうなると、その時点での筋トレをする人の気持ち(やる気)や体調、トレーニングの習熟度によって基準がコロコロと変わるはずです。だから、一概に「この運動は、あなたにとって中強度(高強度)です!!」とはいかないんです。

その他にも、こういう例もありましたので紹介したいと思います。それは・・・

レベル1:軽めの筋トレ

レベル1:軽めの筋トレ

自分の体重を利用した腕立て伏せやスクワット・腹筋運動など自宅で気軽に行える程度のトレーニングで、所要時間を大体30分程度と想定します。

尚、ごく軽いダンベルなどを使用したトレーニングもこのレベルに入ると思ってください。

レベル2:中程度の筋トレ

レベル2:中程度の筋トレ

ある程度の重量のダンベルやベンチなど、最低限のトレーニング設備があってそれを使いこなせる環境を想定します。

トレーニング時間は1時間程度。自宅で筋力トレーニングを行う人の多くは、このレベルに入る事になるでしょう。

レベル3:高強度の筋トレ

レベル3:高強度の筋トレ

高重量のバーベルやパワーラック・トレーニングマシンなどの本格的な設備があり、それを使いこなせる環境を想定します。

設備の整ったトレーニングジムやマニアックな自宅ジムでトレーニングを行う人はこのレベルです。トレーニング時間は1~2時間程度が一般的でしょうか。

 (引用元:肉体改造研究所

ここでの「強度」の定義は、主に環境面に目を向けた点が特徴的です。設備が揃っていなければそもそも筋トレの種目も限られますからね。

強度だけをとっても色々な考え方や視点がありますので、これが絶対的に正しい!と言うのは難しいですが、やはり複雑かつ高度なテクニックが必要で、重さや負荷の高いものを「高強度」と捉えるとわかりやすいのではないでしょうか。

じゃあ、動脈を硬くしたくなければ、筋トレをやっちゃダメなの?

まず、こういう問題も一つの視点だけで考えていくのは、あまり良くないと思いますので、「動脈が硬くなるから、筋トレはダメ!!」みたいな考え方は止めましょう!というのを前提にした上で・・・こんなデータもあるのでご紹介しておきます。

・有酸素性トレーニングと筋トレを併用した場合、動脈が硬くなることはなかった

(Kawano et al.,J Hypertens 2006 改変)

この研究は、ただ単に有酸素性トレーニング(ウォーキングやランニングなど)と筋トレを組み合わせたものですが、もう少し突っ込んだ面白い研究データもあります。

筋トレと有酸素性トレーニングの順番を①「筋トレを先に実施し、その後に有酸素性トレーニングをするチーム」と②「有酸素性トレーニングを先に実施し、その後に筋トレをするチーム」の2つに分けて2ヶ月間検証した結果、①の筋トレを先に実施し、その後に有酸素性トレーニングをする人達の方は、動脈柔らかくなるという結果になりました。

(Okamoto et al. J Appl Physiol.2007 改変)

ですから、動脈は硬くしたくないけど、「どうしても高強度の筋トレをやりたい!」という方は、その筋トレを終えた後にクールダウンを兼ねて、有酸素運動も取り入れれば動脈が硬くなるのを防ぐことができます。

まとめ

今回お話ししたことだけを見てしまうと、「やっぱり、筋トレをやったらダメなんじゃない・・!?」となる方も中にはいるかもしれません。でも決してそうではありません。筋トレ自体が悪いと言いたいのではなくて、激しい筋トレ(高強度)をすることで身体への影響が見られたというのを言いたいだけなのです。つまり、何も考えずにただ闇雲にキツい筋トレをやり過ぎるのは・・・「??」ということです。

ですから、あなたの体調や体力、それこそ気持ちなどに合わせて”適度な”運動を日常に取り入れることが、すごく大切なのです。

私自身この講演全体を通して一番驚いたのが、今回記事としてお伝えした内容でした。正直いうと聞いている間・・「じゃあ、どうすればいいの??」と思ってしまうほどでした。でも、逆にいうと良い”気づき”になったのも確かです。筋トレは、運動強度によって身体に悪影響があるのであれば、まず自分の行っている筋トレが本当に自分にとって必要なことであり、また健康を目的とした時に適度なものであるのかを考えることができたからです。

繰り返しますが、筋トレは色んな健康効果があります。しかし、そのやり方によっては問題もあるということをぜひ頭に入れて頂ければと思います。

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